ジョブ理論を読んだけれど、読み甲斐のある一冊だった
ジョブ理論を読んだ。
ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム (ビジネスリーダー1万人が選ぶベストビジネス書トップポイント大賞第2位! ハーパーコリンズ・ノンフィクション)
- 作者: クレイトン M クリステンセン,タディホール,カレンディロン,デイビッド S ダンカン,依田光江
- 出版社/メーカー: ハーパーコリンズ・ ジャパン
- 発売日: 2017/08/01
- メディア: 単行本
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読み始めたキッカケ
一言でいえば、上司氏にオススメしてもらったからというもの。
遡ること半年と数ヶ月前の話、当時の上司との1 on 1でこんな感じの話をした。
ぼく「機械学習ってある結果を出力するモデルを開発するために、学習のためのデータを設計しますよね。例えば、映像配信サービスを例にすると、動画ページにある『お気に入り』ボタンを押された結果などを『ユーザがそれを好んだ』と解釈して、教師データにするじゃないですか。」
ぼく「でも、『お気に入り』ボタンが一部のユーザにとってはサービスの不備によって発生していたとある需要を満たすのに、たまたまそこで使えるものだったというだけだとしたらと思ったんですよ...。そしたら、その結果を『ユーザがそれを好んだ』と解釈して学習してしまうと間違ったデータが含まれていることになってしまうじゃないですか。」
ぼく「それを考えると、データをどうやって解釈するかの前に、データを収集するタイミングの体験の設計が大事になりそうな気がしているんですよね。」
上司氏「ジョブ理論っていう本を読んだことある?もしかして、新妻くんが考えていることのヒントになるかもしれないから読んでみるといいよ。」
勧めてもらった当初は、院試の最中で忙しく読めなかったが先月に院試が終わったので早速読み始めてみた。
結論から言えば、たしかにそのヒントは読み取れたので、頭に残したいところを抜き出して書き留めておく。
個人的なメモに近いので、割と主観的かつ自分の意見が混じったまとめになりそう。
語りたい項目
- ジョブ理論とは?
- ユーザストーリーについて
- データはすべて人為的である
ジョブ理論とは?
ざっくり言えば、人が特定の状況下にいるときに発生する課題を解決しようとする場面を「ジョブ」と定義している。
そして、すべての商品・サービスはジョブをうまくこなすために”雇用される”と考える。
本書はこの「ジョブ」という概念によって、ビジネス上の製品改善プロセスでありがちな固定観念的な視点を変革しようという試みを感じるなどした。
【ありがちな製品改善】
- 業界の競合製品にあって、自社製品にない機能を追加する
- 業界の標準的な指標のスペックの向上させる
- スマホでいえば、画素数やCPU性能、メモリなど...みたいな
- ニーズやトレンドから機能を追加する
- ...etc
【本書の提唱する方法】
- 顧客のジョブを見つけて、それを解決することで製品の改善を試みるべき
- 顧客の日々の生活の中で発生するジョブをとらえて、その状況から文脈を読み解け
- なぜ『その解決策を選んだのか』あるいは『選ばなかったのか』を読み解く
- ジョブをとらえるには機能面だけでなく感情面や社会面も重要である
- ジョブに対して製品が果たす役割のうち、それを使うことへの感情と他社からの視線を考えるべき、ということ。
そもそも、あるジョブを解決するのに利用されるのは自社製品が属する業界の製品だけではないはずのため...。
つまり、具体の末端である製品を始点に考えるのではなく、より抽象的な顧客の日常に発生するジョブに対して製品の持つ役割を考えよと言ってるのでは、雑に要約してみる。
ユーザーストーリー
ジョブを捉えるには、顧客がある困難に直面したときに解決しようと苦心する姿をストーリーとして描くと良い。
そのときに問うべきポイントは5つある。 - 顧客が解決したい課題はなに? - 顧客は具体的に何に苦労しているのか? - 課題を解決するのを阻んでいるのはなに? - 顧客は不完全な解決策で我慢し、埋め合わせている行動をとっているか? - その人にとっての解決策の品質はなに?そして、そのために引き換えにしていいと思うものはなに?
これらの質問は、そもそも製品に対してだけではなく、課題解決の視点に役立つと思った。
漠然とだが、研究や普段のコミュニケーションにも役に立つんじゃないかなぁというイメージ感もあるので、院に入学したあとにも本章を読み返したいと思ったりもした。
データはすべて人為的である
データが定量的なデータだろうと、人類学的な記述的データだとしても...
それは現象をある側面から切り取って表現・シミュレーションできるようにしたものに過ぎず、必ず主観的なものになってしまうという主旨。
データは収集されている時点で、すでに誰かが切り口や収集間隔、見せ方を決定していて、そこには善悪問わず「意図」が含まれているのだ。 と雑に要約。
僕はこの章に深く共感している。
それは、僕がデータの収集方法に対して、漠然と感じていた課題が説明されていたからだ。
おそらく、僕にこれを勧めてくれた上司は、ここを読ませたかったのだと思う。
この章だけでも切り取って、いろんな人に読んでもらうために勧めて回りたい気分だったので、敢えてとりあげた。
終わりに
この他にも、「ジョブを探す方法」、「顧客とのコミュニケーション方法」や「ジョブのための組織づくり」などの章もあったが、自分にはピンと来なかったため、本記事では触れなかった。
興味を持たれた方は購入 or 図書館で借りるなどしてみてはどうでしょう。
ちなみに、Kindle版もあるので、僕のような電子書籍支持者でも楽に読めたった。